甲斐 栄次郎 Eijiro Kai (バリトン/ジェルモン)

<出演にあたってのコメント>
音楽は、いったいどこにあるのだろうか?生まれた瞬間には消え、そしてまた生まれ、消えていく、、、。そんなことを疑問に思ったことがあった。あるひとつの答え、それは人の心の中にあるということ。

演奏家によって奏でられた音楽は、ホールで聴いているお客様方の心に届き、それぞれの心の中に「記憶」として残る。音楽という芸術は、演奏家だけのものではなく、音楽が響きわたるホールの空間、聴いておられるお客様方、過ぎていく時間、それら全てが合わさった時にひとつの芸術となるのだ。ゆえに、「ライブ」であることは、ある意味で必須なのかもしれない。

過去から大切に守られ、世代を超えて人々の手により受け継がれてきた多くの音楽作品たち。それらが、人の手によって演奏され、聴いているお客様方の心に届いた時こそ、芸術としての完成なのではないだろうか。

音楽は長きにわたり人々の生活とともにあり、感動や喜びになり、命に潤いを与えてきた。数値化、データ化が基準になるような現代社会において、もしかしたら、芸術としての音楽は、少しばかり軽視されがちではないだろうか。そんななかであろうとも、我々音楽家の使命は、もっと先の未来へ、音楽を運ぶことなのだ。