新たな表現の可能性を求めて —— パリ、グラーツ、東京(室元 拓人さん)
室元 拓人さん/Mr. Takuto Muromoto
(専攻楽器作曲/composition)
[ 2024.09.13 ]
グラーツ国立音楽大学
ロームミュージックファンデーション奨学生の室元拓人です。
日頃より多大なるご支援を賜りまして、ありがとうございます。
今年度在籍していたブローニュ=ビヤンクール地方音楽院での学びを終え、その締めくくりとして、学内にて新作の弦楽四重奏曲を初演いただきました。
<音楽院での発表後、演奏してくれた仲間と>
題名は『枯れたブラックベリーの騒めき』。
フランス語では « Murmure mûre de la morte » という、言葉遊びを意識したタイトルをもちます。
弦の上に微細な息を吹きかけるところから始まるなど、実験的な要素を織り込みつつ、レッスンでの学びを活かしロジカルなまとまりを意識し作曲しました。
6月から居を移したオーストリアのグラーツでは、さまざまな新しい音楽を聴く機会に恵まれました。
サラ・ネムツォフ、クレメンス・ガーデンシュテッター、ベアート・フラーの作品個展に赴き、パリとはまた違った音の美学に触れることで、私自身の作曲語法も広がりをもつようになったと感じます。
<グラーツ、中央広場の風景>
日本での活動としては、ピティナ・ピアノコンペティション 特級セミファイナルのための新曲課題を作曲する機会をいただき、8月に東京の第一生命ホールにて初演されました。
『凍てつく火花』と題したこの作品では、演奏時間4分という制約のなかで、特定のテクニックに偏らず、ピアノの多彩な可能性を引き出すことを目指しました。
6名のセミファイナリストそれぞれの解釈の違いからも多くの学びを得ましたし、リサイタル形式で既存のクラシック作品とともに演奏されることで、改めて現代の音楽が果たす役割や意味を考える機会にもなりました。
<『凍てつく火花』を世界初演してくださった津野さん>
今月よりグラーツ国立音楽大学作曲科の修士課程に在籍し、フランク・ベドロシアン先生のもとで更なる研鑽を積んでいます。
引き続き1年間ご支援いただけることの感謝を胸に、新たな表現の可能性を求めて、日々創作に邁進していきます。