パリ国立高等音楽院 5年目下半期(山本 航司さん)
山本 航司さん/Mr. Koji Yamamoto
(専攻楽器サキソフォン/Saxophone)
[ 2024.09.27 ]
パリ国立高等音楽院 第2課程 サキソフォン科
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の山本 航司です。
私の五年間の留学は決して簡単なものではありませんでした。
<卒業試験にて アンリ・トマジ作曲、「バラード」より>
最初は右も左も分からず、クラスの一番下から始まり、人よりペースは遅かったかもしれませんが亀のように、しかし確実に足を進めてきた、そんな道のりだった気がします。
そして今まで積み上げたものがようやく一つの形として自分の中で作り上げることができたのがこの一年でした。
<クロード・ドゥラングル教授の最後のレッスン>
この下半期は怒涛の日々で、まず3月頭に論文の提出がありました。
私のテーマは「夏田昌和のサキソフォン作品研究」で彼の作品を二つ取り上げ分析や考察を進めました。
提出期限ギリギリで書き始めたのですが、進めてみると色々なアイデアが溢れ、「研究は面白いけど、果たして間に合うか…」というプレッシャーとの戦いになりましたが、無事提出することができました。
自分の専科の教授にも非常に喜んでいただき、満足いくものが作れました。
そしてそれから一ヶ月、アンドラ国際サキソフォンコンクールに挑戦しました。
昨年の悔しい思いからのリベンジ、私は今回こそ、という思いを持ち準備をしてまいりました。
結果は入賞4位。セミファイナルでは非常に良いコンディションで臨めましたが、ファイナルは出演順1番というプレッシャーがのしかかり、少し固くなってしまいました。
自分の自信と経験不足を痛感する経験となりましたが、オーケストラとの共演は忘れ難い経験となりました。
<アンドラ国際サキソフォンコンクール ファイナルより>
それから一ヶ月ほど、次は卒業試験がありました。
私は「神聖な場所から世俗的な場所へ」というテーマを掲げ、ゆっくりと花が開いていくようなプログラムを考えました。
緊張こそあったものの、五年間の苦しみ、喜び、そして自分の音楽へ対しての気持ち、それが逡巡し自分の中から溢れ出る、そんな特別な経験をすることができました。
<卒業試験にて 夏田昌和作曲、「極東の国の神聖な踊りと世俗的な踊り」より>
長いようであっという間だった五年間。
しかしその時間は記憶の中にはなくとも、自分の体の中にはしっかりと刻まれているのだと確信することができました。