サンカルロ劇場アカデミーでの研修(金子 紗弓さん)
金子 紗弓さん/Ms.Sayumi Kaneko
(専攻楽器メゾソプラノ/mezzo soprano)
[ 2024.11.12 ]
サンカルロ劇場アカデミー
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の金子 紗弓です。
私は今、サンカルロ劇場のアカデミーに所属し毎日劇場にて研修をしています。
ここには、ベルカントの女王と名高いマリエッラ・デヴィーア氏が毎週三回レッスンをしに来てくださります。
一年目を終え、私は今二年目の研修を始めたところです。
<帰り道にアカデミーの友人たちとヴェズーヴィオ山の前で>
一年目、私はデヴィーア氏とパッサッジョ(2点ホ)より高い音の響きの改善に向き合い、良いクオリティで出す感覚を習得しました。
しかし確実ではなく、特に速い曲中では間に合わず質が落ちてしまうことに悩んでいました。
また声を温める時に高音の質の悪さを感じ、どうして毎回歌い始めにそうなってしまうのか、理解できずにいました。
ある日、何故同じ課題が繰り返されるのか、どうして方法を知っているのに100%の確率で良い高音が出せないのかマエストラに強く質問され、それはまさに私自身が答えを知りたく、マエストラに教えてほしいことでした。
分からない、と答えるとマエストラは激怒し、紗弓がやっていることに原因しているのだから自分で分からなければならない、と仰りました。
問題を感知していたものの、深く向き合っていなかった私に見えていなかっただけかもしれません。
<グラニャーノでのフェスティバルでコンサートに出演した際>
そこから模索する中で私は一つの大切な観点を得ました。
軟口蓋の高さを鋭く認識することです。
私たち歌手はそれぞれの声帯に合わせてどの音の高さで、どの母音で、どのように体を使っているか知覚する必要があります。
それが発声技術です。
私は体感を研ぎ澄ませ、パッサッジョや高音でどの程度どのように軟口蓋や硬口蓋に音を感じるか更に綿密に認識するようになりました。
この感覚を得てから私の良い響きの高音の確率は格段に上がっています。
マエストラのような声の響きの美しい歌唱技術を得たい。
ただただその思いを胸に燃やし、イタリア語の母音の響きの感覚や明瞭さ、中音域が喉声の響きにならないことなど、今日も私は新しい課題にマエストラと一緒に向き合っています。
<サンカルロ劇場でのコンサートのリハーサル風景>