夢の舞台を経験して(戸澤采紀さん)
戸澤 采紀さん/Ms. Saki Tozawa
(専攻楽器ヴァイオリン/violin)
[ 2025.06.27 ]
ベルリン芸術大学
ロームミュージックファンデーション奨学生の戸澤采紀です。
自分にとって長年の夢の街であったベルリンに引っ越して、早くも9ヶ月が経ちました。
ベルリンフィルの舞台に立つというにわかには信じがい現実が日常になってきていますが、自分がここにいれることへの感謝を忘れてはいけないと、日々感じております。
<マーラー9番を弾いている様子>
この半年を振り返って、まず何よりもオーケストラで働くことの大変さを身をもって痛感しました。
夢を語るのは勇気さえあれば簡単ですが、実際その中に行ってみると今まで見ようとしてこなかった、あるいは見えなかったことがどんどん見えてくるものです。
毎週やってくる新曲たち、それに慣れる前にくる最初の本番、ようやく音符が手に入ったと思った頃には最後のコンサート、
そして次の曲の譜読み、といった具合でインプットとアウトプットの切り替えの頻度の多さには目を疑います。
そんな中、これまた自分のバイブルであるマーラーの9番をベルリンフィルで弾くチャンスをいただくことが出来ました。
素晴らしくインテンシブな時間を過ごしましたが、これに関しては、ベルリンでのコンサートの後、各都市でのツアーがありましたので、
自分の中での反省を次に活かす機会がいつもよりあり、学ぶことがとても多かったです。
私がこの曲をどれだけ愛しているかは言葉では言い表せませんが、最後のエッセンでの公演では、音楽の持つ何か特別なミラクルを信じざるを得ない瞬間を経験し、
音楽家を志す者なら誰しも苦しむ現実だとは思いますが、自分自身の音楽において何かを諦めることをプロフェッショナルだと思うしかない環境に身を置くのではなく、
何か毎日少しずつでもいいから自分を変化させていける時間と環境、心持ちを維持できるように、努力したいと思わせてくれるようなツアーでした。
改めてロームミュージックファンデーションの支えがあってこその経験だと思いますし、この2年の私の中の変化、外の変化を成長に繋げられるよう、今後も精進いたします。