留学してからの変化(小林海都さん)
小林 海都さん/Mr. Kaito Kobayashi
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2015.03.6 ]
学校名:エリザベート王妃音楽学校
ロームミュージックファンデーション奨学生の小林海都です。
ベルギーは12月に入ってから急に気温が下がり、同時に街全体はイルミネーションやクリスマスマーケットで賑やかな雰囲気となりました。
クリスマス当日、僕はホストファミリーと共に過ごし、ミサに行き、食事をしたり、話をしたりと、家族の温かい雰囲気を感じることができました。
<クリスマス当日、ホストファミリーと>
さて留学生活が始まり4ヶ月半が経ちました。
出発直前は現実的な問題に対する不安でいっぱいでしたが、実際に生活がスタートしてからすぐに、新しい環境の中でスポンジの如く吸収している自分がいて、今では「もっと早くヨーロッパに来れば良かった!」とさえ思っています。
僕自身が驚くほどの収穫があったと思うので、今回は留学してから変化したこと、発見したこと、経験したことについて書いてみます。
1、空気感の違い 練習の質の向上
日本とヨーロッパの相違点の一つとして「空気感の違い」についてはよく言及されますが、僕自身の体験からいえることは、日常に流れている空気が既に音楽と一体化しているということ。
つまり「さあ、これから練習するぞ‼」と無駄に意気込む必要はなく、いつでも音楽に向き合う姿勢が十分に整った状態で練習が始められます。
又、日本よりも音に対して触発しやすい響き方をする分、より柔軟に、質の高い練習が可能になりました。
2、マジカル・サウンド
僕の師匠であるピレシュ先生は、「サウンド」そのものが如何に演奏する上で重要であるかということをいつも教えてくださいます。
わかりやすくいうと、「美しい音で弾きましょう」ということ。
音色が云々、ということは誰もが考えることではあると思いますが、それ以前に音そのものに魅力がある人、最初の1音で自分の世界に引き込んでしまう演奏家はそう多くないと僕は思います。
<ピレシュ先生のレッスンの様子>
実際僕がピレシュ先生の演奏会に初めて行った時、最初の一音聴いた瞬間「ピアノからこんな音がでるのか!」という驚きで興奮がなかなか醒めなかったことを今でも鮮明に覚えています。
そのサウンドを先生は「マジカル・サウンド」と呼んでいます。
そして「マジカル・サウンド」を生み出すことができると、音楽に動きが出る、複声部の弾き分けが容易になる、より細やかな音色やニュアンスの違いを的確に捉え、それを音に表現しやすくなる、結果、理想の身体の使い方に自然となっているetc. 、、、と、とにかくいいこと尽くしなのです。
<Beethoven Festival 終演後ピレシュ先生と>
「自分もあんな音を出してみたい!」という一心で日々試行錯誤し続けていますが、少しはその成果があったのか、まず練習が何倍も楽しくなりました。
何か探し物をしているような、、、そして隠れた魅力を発見した時の快感が癖になるのです。
さらには近所のホームパーティーで弾かせていただいたときに、「君の演奏を聴くまでピアノの音の魅力を忘れていたよ」といった音に対する感想をいただくことができ、とても嬉しかったことも印象に残っています。
3、Beethoven Festival
<Beethoven Festival ジョイントコンサート>
年に一度行われる学校のフェスティバル、今年はベートヴェンがテーマで12月初旬から1週間にわたり様々なベートヴェンの作品が演奏されました。
僕は2つのコンサートに出演しましたが、特別に素晴らしい経験となったのは、「合唱幻想曲 作品80」のピアノソリストとして演奏させていただいたことです。
この曲は管弦楽、合唱、ピアノと大規模な編成で、演奏される機会は滅多にありません。
コンサートは会場内約800人のほぼ全員がスタンディングオベーションという信じられないほどの熱狂ぶりで大成功に終わり、僕にとって大きな財産になりましたし、このような素晴らしい舞台に立たせていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
<Beethoven Festival 合唱幻想曲のコンサート>
1月からは、校舎の隣にある完成したての寮に移り、一人一部屋・ピアノ付、という最高の条件で生活することになります。
また演奏会の予定としては、2月にソロリサイタル、3月にはベルギー国立管弦楽団との共演が決まっています。
素晴らしい学校のサポート体制、先生、仲間という環境の中で思う存分学べることに感謝し、ますます充実した日々となるよう精進していきたいと思います。