エネスク編(原麻里亜さん)
原 麻里亜さん/Ms. Maria Hara
(専攻楽器ヴァイオリン/violin)
[ 2016.07.8 ]
学校名:パリ国立高等音楽院大学院
ロームミュージックファンデーション奨学生の原麻里亜です。
私の住む街パリでは、日本よりちょっと遅い桜の季節が終わり、すっかり春らしくなりました。
<リサイタルのリハーサルの一コマ(パリにて)>
パリ国立高等音楽院に留学して約4年。修士号取得後は第3課程に進み、エネスクの研究を続けています。
昨年ブカレストにあるエネスク博物館と音楽出版社を訪問し、手に入らない楽譜や文献を10冊ほど入手しましたが、その中に第3課程のプロジェクトである、エネスクのヴァイオリン協奏曲「カプリス・ルーマン」の楽譜もありました。
第3課程では、学長により承認された学生のみがオーケストラL’OLCとの共演、録音が許されます。
同期で入学したヴァイオリンの3人のうち、私1人だけが許可されました。
しかし問題は、オーケストラのパート譜がルーマニアの出版社にはなかったことです。
そこで学長がルーマニアと交渉をしてくださり、オケのパート譜が手に入り、プロジェクトが実現できました。
<クルト・ヴァイルの協奏曲>
指揮は、パリ管弦楽団コンサートマスターで指揮者でもある、フィリップ・アイシュ氏。
録音技師は、音響学科の教授でした。
30分の4楽章から成るカプリス・ルーマンは、ルーマニアの民俗色が強い作品です。
そのため、ソロパートはかなり即興的に書かれています。
その上20世紀の音楽ですから複雑です。
録音初日、オケとのアンサンブルを気にしていると、指揮者や録音技師、コンミスから「麻里亜はソリストなのだから、自分の好きに弾いて。」と言われ、思い切り自分の考えるエネスクを表現できました。
また、1楽章にクラリネットとのユニゾンがあり、休憩時間にロシア人のボグダンとお互い納得行くまで練習しました。
本番でも何回も取り直しをし、2人の息が完璧に合った時は感激しました。
音楽のもつ不思議な空気で、音楽家同士の信頼関係が作られて行くのを感じました。こうして録音を無事終える事ができました。
もう間もなく、CDができてくると思います。
もう1つの嬉しいできごとは、パリ国立高等音楽院とフランスのMeyer財団による、録音&CD作成プロジェクト「若きソリストたち」の審査に合格したことです。
合格者5名のうち、日本人は私1人です。
来年度パリで、エネスクのヴァイオリンとピアノの作品、70分のプログラムを録音して頂ける事になりました。
フランスでは、1つのコンサートで良い演奏をすると、感動されたお客様が次のコンサートを企画して下さることがあります。
お城や教会などで、ヴァイオリン協奏曲やソリサイタルのチャンスがたびたびあります。
これからも謙虚に、師ドガレイユ先生からアドヴァイスを貰い、仲間たちと切磋琢磨していきたいと思います。
またロームミュージックファンデーションの支えがあったからこそ、エネスクの研究や留学生活が潤滑に進められたと感謝している毎日です。
<エネスク国立博物館にて。エネスクの研究者と。>