周囲の演奏家から、感じ、学び、盗む(黒岩航紀さん)
黒岩 航紀さん/Mr. Koki Kuroiwa
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2016.12.7 ]
学校名:東京藝術大学大学院
ロームミュージックファンデーション奨学生の黒岩航紀です。
春から夏にかけては、日本全国各地、様々な場所で演奏する機会に恵まれました。
ピアノソロの演奏はもちろんのこと、伴奏や協奏曲で、素晴らしい演奏家との共演が多かったことは大きな成長につながったと思います。
一人で部屋に篭ってピアノを弾くだけでは発見できないもの—呼吸であったり、旋律の歌い回し、音色への追求—。
そんなことを、同世代の他楽器の演奏家とのアンサンブルを通して、考える時間が多く、刺激的であり充実した時間を過ごすことができました。
これはピアノソロを勉強する上でも大きなヒントになります。
『観客の方と近い距離でカジュアルな雰囲気のコンサートをやってみたい。もちろん音楽は本物で』という思いから、去年から横浜の馬車道スタインウェイサロンで、私の企画で演奏会をさせていただいています。基本はソロとアンサンブルという形で行い、第1回目の去年1月は、オーボエとフルートの方をお招きしました。
7月の第2回公演はチェロの矢口さん、クラリネットの中舘くんを招き、ピアノソロ、チェロの伴奏、クラリネットの伴奏、そしてトリオの室内楽。
ブラームスのクラリネット三重奏—晩年に書かれたこの深い音楽を、このお二人と演奏するのは、大変難しいことでした。
ピアノという楽器で自分一人が無機質になってしまわないようにと頭を悩ませ、メロディの歌い方やレガートの仕方、音色の使い方というのを研究しました。大変でしたがそのかいあって観客の皆さんにも質の高い音楽をお届けできたのではないかと充実した経験をいたしました。
このシリーズは半年に一回させていただける予定ですが、優秀な演奏家をお招きしてのアンサンブル演奏を通し、毎回自らも成長していきたいと考えています。長く続けていきたい企画です。
本来はこの夏、海外の講習会への参加も検討しておりましたが、スケジュールの都合でなかなか難しく、国内で行われた、ぎふリスト音楽院マスタークラスというものを受けました。
教授のファルヴァイ・シャーンドル先生のレッスンを受けたり、話したりしましたが、特にリストの音楽では、少し自由すぎると、テンポやリズムの取り方を正され、ハンガリーの歴史や文化についても話してくださいました。
受講場所のぎふサラマンカホールが実は響きの素晴らしいホールであったことは、嬉しいサプライズで、最後の選抜受講生演奏会では、ハンガリー狂詩曲の6番を演奏しました。受講時に先生が隣で弾いてくださったので、その音楽の良さを真似してみたりしたのですが、講習会を受講する前よりハンガリーの色みたいなものが出せたと思います。
受講の成果の手ごたえを感じました。
そしてここ最近、同世代のピアニストの演奏会も積極的に聴くように心がけています。共演の機会も何度かあり、ソロ、連弾と行いましたが、自分とは違ったアプローチの仕方にも新鮮な驚きがあり、そういった自分にないもの、ハッとさせられる瞬間が楽しい。いいところを、どんどん盗んでいってしまおうと思っています。
そして、今年はまだコンクール参加ができていませんが、近い将来、国際コンクールの挑戦も視野に入れております。
今後も、他楽器や演奏から、いろんなものを吸収し、広い視野で勉強し研鑽を積んでいきたいと考えています。