オーストリアで始まった留学生活(吉澤淳さん)
吉澤 淳さん/Ms.Makoto Yoshizawa
(専攻楽器ソプラノ/soprano)
[ 2017.04.17 ]
学校名:アントンブルックナー音楽大学大学院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の吉澤淳です。
私は、2016年10月よりオーストリアはリンツにありますアントンブルックナー音楽大学修士課程に在籍し、オーストリアでの海外生活が始まりました。
<終演後に出演者の友人たちと>
神奈川県育ちの私には、オーストリアの冬の寒さに初めは驚くばかりでした。
年明けには雪の降る日も増え、大学も辺り一面銀世界に包まれました。今では少しずつ日が長くなっていき、暖かい日も増え始め、春の訪れを待ち遠しく感じております。
<雪化粧をしたアントンブルックナー音楽大学>
さて、私は現在大学にて3人の先生の下で週に1度ずつ3日間の個人レッスンを受けています。
それぞれの下で取り組むジャンルは異なり、オペラ・オラトリオ・歌曲を偏ることなく学んでおります。個人レッスンの他、オペラの演技指導やディクション指導など、海外留学を通して深く追求していきたい、と考えていたことに取り組むことができ、充実した毎日を過ごしております。
昨年の12月には、早速リンツのブルックナーハウスにてG.F.ヘンデル作曲のオラトリオ「アレクサンダーの饗宴」のソプラノソリストを務めさせていただきました。
ソリストを務めるにあたり、モーツァルテウム音楽大学教授U.ホーフバウワー先生によるバロック音楽における歌唱についてのワークショップへも参加し、演奏会へ向けて準備を重ねていきました。終演後には大きな拍手、そして嬉しい言葉をたくさんいただくことができました。
<ブルックナーハウスにて演奏終了後>
同公演をリンツから少し離れた町、シュトルーデンガウ(Strudengau)にある教会でも演奏いたしました。四方を山々に囲まれており、その麓に広がるこの町は空気も澄み、夜には星が美しく、時間の流れがゆっくりと感じることのできるとても自然の美しい町でした。
演奏会の終演後、出演者とともにバスに乗ってリンツへと帰る際に、忘れられない光景があります。
一歩町の外へ出ると、道には街頭一つたっておらず、昼間には明るかった道も、夜には真っ暗となります。
しばらくバスで夜道を進んだ後に、ふと町のほうを振り返って窓の外をみると、灯りのない暗闇の山間にぽつぽつと明かりがともったシュトルーデンガウの町が遠くに見えました。
その灯りがとてもあたたかく、その時の光景と自分の中に生まれた気持ちをよく覚えています。演奏会や音楽を通してだけでなく、何気ない風景や海外での日常から生まれた気持ちも大切にしながら、音楽や自分と向き合った留学生活にしていきたいと改めて思いました。
<演奏会を行ったシュトルーデンガウにある教会とその前に広がるクリスマスマーケット>
3月から始まる夏学期には、いよいよオペラに挑戦いたします。
4月にヘンデルのオペラ「セルセ」にてヒロインのロミルダを演じさせていただきます。リンツでの公演の他、同じくオーストリアはバート・ハルにある市立劇場でのゲスト公演にも出演させていただきます。
今学期にヘンデルのオラトリオを通して学んだバロック音楽への取り組みや経験を、こうしてすぐにまた別の分野、オペラへと繋げることができる機会を頂けたことをとても嬉しく感じております。
オペラの作品を一本演じさせていただくのは今回が初めてとなるため、私にとっては新しい挑戦となります。しっかりと作品と向き合いたいと思っております。
また歌曲への取り組みとしましては、リンツから少し離れたクレムスエック城にてシューベルティアーデに参加させていただきます。
ここには楽器博物館が併設されており、多くの貴重な管楽器や鍵盤楽器が展示されています。演奏会では実際にハンマークラヴィアを使って演奏ができるということで、今からとても楽しみにしています。
歌曲は日本に在学中の研究分野でもあり、この留学を通して最も取り組みたいと思っていただけでなく、私の大好きな分野でもあります。
ドイツ語が母国語であるお客様の前で演奏をさせていただくのは、今回が初めてとなり緊張もしておりますが、母国語だからこそダイレクトに詩の内容が伝わっていく楽しみに、今からわくわくもしています。私の音楽から言葉のもつ色や温度を感じていただきながら詩と音楽を楽しんでいただける時間になるよう、準備をしたいと思います。
こうして心置きなく音楽に向き合うことができるのも、ローム ミュージック ファンデーション様の温かいご支援の賜物であり、改めて心より感謝しております。
この素晴らしい環境の中で学ぶことが出来ることに感謝の気持ちを忘れずに、新しい挑戦へのいらぬ我慢をせずに研鑽に努めたいと思います。