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カザフスタンでのフィールドワーク(東田範子さん)12/30

東田 範子さん/Ms. Noriko Toda
(専攻楽器音楽学/musicology)

[ 2019.03.8 ]

学校名:東京藝術大学大学院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の東田範子です。

私の専攻は民族音楽学で、専門のフィールドは中央アジアのカザフスタンという国です。

私は、その国の主要民族であるカザフ人の伝統音楽について研究しています。

<エスケネ村での演奏の様子>

 

 

 

これをお読みの皆さんの中には、カザフスタンってどこだろう?と思われる方も多いかもしれませんので、国や音楽について簡単にご紹介します。

カザフスタンは中国の西、ロシアの南に位置し、日本の6倍以上の広さを誇ります。

カザフ人の他に、ロシア人など100を越える民族が住む多民族国家です。

カザフ人はトルコ(テュルク)系の民族で、20世紀初頭に社会主義国の版図に入るまでは遊牧生活を送っていました。

歴史的にも地理的にもさまざまな民族と接触してきたため、日本人に似た顔もあれば、中東系の彫りの深い顔、スラブ系とのミックス顔などさまざまな風貌があり、往来する人たちを眺めているだけでも興味が尽きません。

 

<滞在した家の周囲の様子>

 

カザフの伝統音楽は、ドンブラという木製の二弦楽器で演奏されます。

演奏形態の基本は独奏で、歌・叙事詩・器楽に大きく分けられます。

もともと打楽器による伴奏がないからか、弦を弾くときに右手を楽器の胴に打ち付けてパーカッシブな音を出します。

それによって生まれる不規則なリズムも、おもしろい特徴の一つです。

 

カザフスタンでの音楽教育の近代化は、ソ連時代の20世紀前半から行われました。

伝統音楽の教育は、西洋古典音楽と同様、音楽学校で行われるのが主流です。

私の研究では、都市と村落での伝統音楽の教育を比較する必要があるため、2018年の夏に、カラガンドゥという州の村々を40日間ほど訪れました。

音楽教育機関ではなく、個人で伝統音楽を学んできた50人以上の方々にインタビューを行い、演奏を聞かせてもらいました。なお、この調査をまとめた結果は、同年12月に学会で発表しました。

 

<結婚式のテーブルの様子>

 

滞在中に、お世話になった家族の結婚式に招待されました。

結婚式のごちそうと言えばベシュバルマクという料理で、大皿にワンタンのような生地、玉ねぎ、そして馬肉を豪快に盛り付けます。

その料理は、前日に馬を屠殺するところから親戚中で準備をしたのですが、祝い事も動物の命との引き換えに行われることをごく自然に認識する生活様式に感慨を覚えました。

そのベシュバルマクには、250人以上の招待客が舌鼓を打ちました。

2019年には、都市での音楽伝承について現地調査を行う予定です。楽しみにしています。

 

 


伝統音楽はあまり縁がなく知りませんが、音楽の根源みたいなものを感じますね。 ぜひ素晴らしい研究ができることを祈っています!