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全部ユーフォニアムの音に聴こえる….!?(佐藤采香さん)10/1

佐藤 采香さん / Ms. Ayako Sato
(専攻楽器ユーフォニアム/Euphonium)

[ 2020.01.20 ]

学校名:ベルン芸術大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の佐藤采香です。

スイスの首都ベルンで2018年の9月から留学生活が始まり、現在は2年目の秋のセメスターが始まったところです。

スイスは世界幸福度ランキングで毎年上位にランクインしている国で、その中でも私の住むベルンはドイツ語を喋る人々の中でもとりわけゆっくりとした丁寧な話し方で穏やかで優しい方が多いと感じます。

それはベルン近郊には裕福な農民が多かったからとか。

すれ違う街の人との挨拶は「Grüessech」といい、グリュッセとにこやかに声を掛け合います。その挨拶と笑顔に心洗われる日々。。。。

 

<ベルン近郊に位置するバラ公園からの旧市街(世界遺産)の眺め>

 

スイスは物価が高く食品は大体日本のものの2倍ほど。世界のビッグマック価格ランキングでは毎年堂々一位で2019年7月31日のデータでは日本が390円なのに対しスイスは712円。。

スイスの料理はチーズフォンデュやラクレットなどチーズを使ったものがとても美味しいですが、それを頑張った日のご褒美にして、日々は安いパスタ生活です。

最近はパスタを茹でる際に重曹を一緒に入れ、ラーメン風の麺にするという技を身につけ、まぜそば風やつけ麺風などバリエーションが増えました。

消費税は2019年9月までの日本と同じ、8パーセント。日本は10月より10パーセントになりましたね。

次の帰国の時に覚えておかないと。

 

さて、私はユーフォニアムという楽器を専攻しています。

小学三年生の時に小学校の金管バンドクラブでユーフォニアム出会ってすぐに「暗闇の中で優しく灯っている明かりのような音」という印象を抱き、その音を育むようにユーフォニアムと一緒に音楽を学んできました。

 

1840年頃に誕生した楽器でまだまだ日本だけでなく世界のクラシック音楽シーンではレアな楽器だと思いますが、金管バンドや吹奏楽の中で活躍する楽器というだけでなく、ソロ楽器としても同時に発展してきている楽器なのです!

私がユーフォニアムとともに音楽を勉強する中で、この楽器に馴染みのない方にいかに魅力を伝えていくか、それも留学生活の中でのユーフォニアムのクラスメイトとの議題でもあります。

たった2年の留学生活ですが、現在重点を置いていることはユーフォニアムの為に書かれた作品ではない楽曲ばかりをあえて取り上げ、様々な視点から音楽とユーフォニアムについて学び感じています。

 

しかし元々の出会いがブラスバンドであった私は、やはり根っからのブラスバンド好き。。

留学以前からヨーロッパのブラスバンドの人間業とは思えぬテクニックの高さと豊かなサウンド、そして特にスイスのバンドの音楽性の非常に高いことに注目していました。

ちょうど今年5月にヨーロピアン・ブラスバンド・チャンピオンシップがスイスのモントルーでの開催で聴くことが出来ました。

ヨーロッパ各地のトップのブラスバンドが集い最高潮の集中の中繰り広げられる演奏は、圧巻そのもの。

その音楽に生で触れられる喜びを全身で感じると共に、私は戦々恐々としました。

なぜならその奏者のほとんどはアマチュア奏者であるからです。

 

時を同じくして、私を変える大きな出会いがありました。

ブラスバンド・ベルナーオーバーラントというスイスのトップバンドの一つであるブラスバンドからお誘いを受け、ソロユーフォニアム奏者として1年演奏できることになったのです。

 

 

<ブラスバンド・ベルナーオーバーラント創立50周年記念コンサート出演時の写真>

 

ブラスバンドのリハーサルは毎週水曜と土曜の週に2回。

演奏会やコンテストの前は少し増えます。

例のごとく日中は音楽以外の仕事をしているメンバーがほとんどでスーツ姿のメンバーもいます。

指揮者はベルン芸術大学の指揮科で教鞭を執るコルズィン・トゥアー先生。

 

不思議なことに、リハーサルの度に私のユーフォニアムの音がどんどん豊かにリッチにワイドに、素敵になっていきます。

 

なぜだか考えてみました。

 

一つの理由はもちろん音色のリッチで豊かなメンバーの中で演奏しているから、ということが挙げられますが、ブラスバンドの管楽器はほぼ同属の金管楽器で構成されているということに注目すると、ユーフォニアム以外の音もほぼユーフォニアムの音なのではないかと思うようになったからです。

 

他の楽器と同時に音を出す場合、他の楽器と言えど同属の楽器から出ている音なので、音がとてもよく溶け合います。

よく聴くと全部ユーフォニアムの音色の応用版に聴こえてきます。(笑)

その音が自分の音色として脳に刻み込まれ、自身の音色の肥やしとなっているのではないか、これが現在の所の辿り着いた答えです。

 

ということを考える暇もないほどバンドのリハーサルはとても効率が良く気づいたら曲の突き詰められる極限まで追求していました。

そして先日9月21日に開催された第30回ベッソンスイスオープンコンテスト2019では、総合2位という成績を残しました。

1位とは1点差という惜しい結果でしたが本番の演奏が終わった後歩けなくなるほど集中しベストを出しきった、という経験のできたコンテストでした。

 

<コンテスト演奏終了直後>

 

<結果発表後>

 

次に控えるバンドのコンテストは、スイス国内の代表を決めるチャンピオンシップです。来週からそれに向けたリハーサルが始まります。

もっと良い音が出ますように…!