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1年の振り返り(小野田 健太さん)7/29

小野田 健太さん/Mr.Kenta Onoda
(専攻楽器作曲/composition)

[ 2022.08.5 ]

パリ国立高等音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の小野田健太です。

 

私は2021年9月よりパリ国立高等音楽院の第一課程に在学しており、もうすぐ留学生活1 年目が終わろうとしています。

最初こそ何かと苦労はありましたが、先生や作曲科の同期にも恵まれ(フランス語が上達したのは間違いなく彼らのおかげです)、

毎日楽しく暮らしています。

 

このレポートでは、この1年間の特に後半を振り返ろうと思います。

 

 

2月には、音楽院で開催された電子音楽のコンサートにて電子音響作品を初演しました。

今回の作品は使用する音を自ら録音し、次いで録音した一連の音を一つひとつのファイルに切り取って素材を準備するところから始まりました。

作品制作はそれらの素材の細かな組み合わせに終始し、更にボリュームや音の左右の振り分けなど微妙な調整が必要になるので、

音符で書く作曲よりも相当な時間がかかります。

日本ではこのような作品をつくってこなかったため、

慣れないことが多く骨の折れる作業でした。

 

コンサートでは24 個あるスピーカーの音量を自分で操作しました。

リアルタイムでの操作だったので、ある種の演奏行為ともいえる作業でしたが、

大勢の人の前でそのようなことをするのは久々だったので大変緊張しました。

本番はうまくいったように思います。

 

 

6 月には、2 台のオーケストラとピアノのための作品「綺羅星Chantsd’étoileurs」が完成しました。

「星を散りばめる」という意味の「étoiler」というフランス語の動詞が発想の源になっています。

ソリストがメロディの断片をオーケストラに投げかけ、オーケストラはそのメロディを支える

というやりとりを積み重ねてゆくうちに、やがて音の塊へと変容し二者間に点在する……といったような軌跡をたどる作品です。

制作には半年以上かかっており、特に締め切り直前はほとんど家にこもって作曲しなければならなかったため、

曲を書いている間は辛い生活を送っていましたが、それだけ完成した時の達成感もひとしおでした。

この作品は8月にサントリーホールにて初演される予定です。

 

学年末にはいくつかの最終試験がありました。

こちらの試験の特徴として、とにかく口頭での試験が多いということがいえると思います。

座学のみならず作曲実技の試験ですら作品提出だけでは終わらず、

自作のプレゼンを3人の審査員に向けて行い、質疑応答を経て成績がつくという方式です。

口頭試験では咄嗟の判断や受け答えをせねばならないうえ、

自分の場合は言語の壁もあるため苦労が絶えませんが、作曲の試験ではようやく手応えを感じました。

 

 

2年目も大変さは続きそうですが、引き続き学業に励む所存です。

この1年間のローム ミュージック ファンデーションの皆様のご支援に感謝申し上げます。