2023年を振り返って(桑原 志織さん)7/31
桑原 志織さん/Ms.Shiori Kuwahara
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2023.08.4 ]
ベルリン芸術大学大学院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の桑原志織です。
2021年度、2022年度の奨学生に採用していただき、多大なご支援をくださいましたロームミュージックファンデーション様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
<イスラエルにて>
2023年はピアノ協奏曲を演奏する機会に多く恵まれました。
今年はラフマニノフのメモリアルイヤーということで、2月に開催されたベルリン芸大のシーズンコンサートで、パガニーニの主題による狂詩曲のソリストに選んでいただきました。
この演奏会の直前にトルコ・シリアで大地震が発生したことを受け、当日は急遽会場にて義援金を募ることになりました。
こういったヨーロッパのアートシーンでの行動力と団結力は見事なものでした。
思いがけず満席のお客様にご来場いただき、多くの義援金が集まったとの報告を受けました。
演奏を通して微力ながら世の中に貢献できたことは、とても貴重な経験となりました。
<ベルリン芸大 Winter Concert ©Kaori Miyamoto>
続いて3月はイスラエルにお招きいただき、オファーを頂いたラフマニノフ ピアノ協奏曲4番を共演させていただきました。
ラフマニノフ晩年の傑作である2つの協奏曲に続いて取り組めたことは、私にとって大きな学びがあり、喜びでもありました。
特に4番の協奏曲は名曲でありながら、アンサンブルの難易度が高いこともあって滅多に演奏されません。
今回のイスラエルの演奏会でも、マエストロ、オーケストラ、ソリスト(私)のそれぞれ全員が生まれて初めて演奏するという、まさに千載一遇のチャンスとなりました。
にもかかわらず、リハーサル時間はたった2時間!
過酷なスケジュールでしたが、直前までスコアを読み込んで全力を尽くしました。
その甲斐あってか評判は上々で、終演後に多くの方々からお声をかけていただきました。
この作品の魅力をお客様に感じ取っていただけたことが大変嬉しかったです。
そして光栄なことに、数日後マエストロからお電話をいただき、9月にはポーランドで再びピアノ協奏曲を共演させていただくことになりました。
今からとても楽しみにしております。
<イスラエルにて>
6月には国家演奏家資格課程の最終リサイタル試験を終えて、この秋でベルリン芸術大学を卒業する事となりました。
ドイツで学んだ5年間の集大成としてオールドイツプログラムで臨み、最高点をいただくことができました。
ドイツ音楽はどこまでも探求の余地がある深く豊かな世界ですので、今後も私の音楽の軸として、さらに研鑽を積んで取り組んでまいりたいと思っております。
7月にはセルビアのノヴィ・サドにて、室内楽の音楽祭に出演しました。
今まで音楽祭にはソロで参加する事が多かったのですが、現地の音楽家達と怒涛のリハーサルを連日重ねた体験は、刺激的で楽しい日々でした。
室内楽の素晴らしさを改めて実感いたしました。
<ベルリン芸術大学卒業リサイタルにて>
こうして海外での様々な演奏機会を得ることができましたのは、ベルリン芸大に留学し、ベルリンに拠点があったおかげでもあります。
現実的な話にはなりますが、オファーを頂いたときに “日本からの旅費は出せないので、ベルリンから来てくれるなら…”という前提でのお話も多かったことは事実です。
ご支援いただいたこの2年間はコロナ禍真っ只中、そして歴史的な円安という、留学生には大変つらい時期でもありました。
それにもかかわらずこうしてドイツで学び、チャンスを逃さず各国で経験を積むことができたのは、何よりもロームミュージックファンデーション様の大きなお力添えがあったからこそでした。
感謝の気持ちで一杯です。
今後は、演奏を通じてこのご恩を少しでも社会へとお返しできるよう、さらに努力してまいります。