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「木はその実によって知られる」(福丸 光詩さん)8/2

福丸 光詩さん/Mr. Koji Fukumaru
(専攻楽器作曲/composition)

[ 2023.08.11 ]

東京音楽大学大学院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の福丸光詩です。

 

前回のレポートから現在に至るまでの間、修士論文のための研究に力を注いでおりました。

作曲の方は夏までお休みして、秋から委嘱作品の作曲を開始することにしています。

 

ですので今回のレポートは、私の関心ごとである「キリスト教神学と芸術音楽」について、きわめて簡単ではありますがご紹介させていただきます。

 

<学内門下試演会の様子>

 

 

私の研究対象は、一つは「音楽修辞学」、それから「キリスト教理念/或いは神学と芸術音楽」という2点であります。

 

一つ目の「音楽修辞学」は、音楽を通して、伝えたい表現内容をどのような書法で書くと効果的であるか、ということの学問が、音楽における修辞学であるといえます。

西洋音楽の歴史では比較的古い作曲技法であり、この頂点にはJ.S.バッハがおります。

 

 

二つ目の「キリスト教理念/神学と芸術音楽」は、作曲家個人のキリスト教理念(或いは信仰)が音楽作品の中にどのような形で表れているか、ということの関係性の研究を指しています。

この二つは、一般的には、古楽や古典派までの、やはり古い西洋音楽に顕著でありましたが、私の研究では、近代音楽さらには現代音楽にも見出すことができる、ということを一つの成果として主張したいと考えています。

 

「木はその実によって知られる」とは聖書の有名な一節ですが、この類比を音楽に適用することが許されるなら、作曲家の内性は音楽作品に実際の形をもって表れうるし、逆に音楽作品そのものをよく観察することによって、作曲家の音楽理念を明らかにすることができるのではないか、と私は考えております。

 

これらは当然、私自身の創作理念と深く関係しております。

作曲家・演奏家問わず、音楽家のそのひと「そのもの」或いは内的実質と言っても良いものが、実際の音楽としてどう表出されているか、というところに、私は最も重点を置いているということです。

そういった姿勢を、作曲家として一貫していくということが、私の今後の抱負であります。

 

<子供のための音楽劇(筆者作曲)のリハーサルの様子>

 

 

幸いなことに、私は2023年度も引き続きRMF奨学生として活動することが叶いました。

上記のような私自身の理念すなわち木が、どのような形で実(作品)を結んでいくか、自分にも分からないところがあり、またそれが楽しみでもあります。

 

次回は10月にレポートを書くことになっていますので、それ以降の演奏会の新作について、お知らせできたらと考えております。