2つの初演を終えて(小野田 健太さん)3/31
小野田 健太さん/Mr.Kenta Onoda
(専攻楽器作曲/composition)
[ 2024.04.9 ]
パリ国立高等音楽院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の小野田 健太です。
9月の年度初めからこのレポートを書いている3月末の間に、2つの作品初演が終わりました。
<ギメ東洋美術館のコンサートにて>
1つ目はクラリネット、アコーディオン、チェロのための「Bogosse」という作品です。
日仏笹川財団の委嘱によって書かれ、2024年3月7日にギメ東洋美術館にてアンサンブル • ケルンの演奏により初演されました。
3月現在、この美術館では源氏物語についての特別展示が行われており、作曲の依頼の際も源氏から発想を得て書くように、というお題が出されました。
Bogosseとはフランス語でいわゆるイケメンのことを指し、稀代の色男である光源氏を示唆しています。
<22日のコンサートのリハーサル中>
2つ目は、トイピアノ、ヴァーチャルトイピアノ、クラリネット、サクソフォン、打楽器、チェロと電子音響のための「Bogossitude」という作品です。
2024年3月22日に音楽院にて、フランク • オリュ指揮のアンサンブル • ネクストにより初演されました。
Bogossitude(無理やり訳すならば「イケメン性」といったところでしょうか)というタイトルが示す通り、この作品は私たちのもつ、自らの美しさへの執着から着想されています。
古くはプリクラから現在の加工アプリに至るまで、技術の進歩と共にデジタルの世界では私たちの見た目を修正することが可能になりましたが、このことは人間の飽くなき美への追求を暗示しているともいえます。
作曲にあたっては、美しい音色をもつが不器用さの目立つトイピアノと、そのトイピアノのサンプリングによって生まれ、ダイナミクスレンジの小ささやダンパーの欠落といったトイピアノの欠点を補う「ヴァーチャルトイピアノ」の2つの楽器、およびアコースティックなアンサンブルと電子音響によって、リアルとヴァーチャルのずれを描くことを試みています。
<終演後>
次の作曲の予定は、ルツェルン音楽祭の作曲アカデミーに参加するためのオーケストラ曲です。
頑張ります!