オペラと歌曲と(深瀬廉さん)7/31
深瀬 廉さん/Mr.Ren Fukase
(専攻楽器バリトン/baritone)
[ 2019.11.8 ]
学校名:ベルリン芸術大学大学院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の深瀬 廉です。
いつもご支援賜り、心より感謝申し上げます。
3月からの半期、様々な機会で演奏させていただきました。
<DDR歌曲演奏後ホッとするひと時>
5月にはドイツ民主共和国(DDR)時代の歌曲に関するフォーラムがハノーファー音楽大学で開催され、ベルリン芸術大学の現代歌曲のクラスの一員として演奏してきました。
その時代の歌曲は音楽、詩の両面とも社会的事象に関連した作品がほとんどなので、演奏技術はもちろん、詩の文脈を理解した上で説得力のある演奏が求められました。
歌曲という分野は、オペラのように詳細な物語や感情変化が明確に描かれることがなく、また舞台装置に助けられることもないので、音楽と言葉の説得力が舞台上で物を言います。
十分な表現をすることができたと手応えを感じることができた舞台でした。
今年2019年はクララ・シューマンが生まれて200年目の記念の年です。
そこで、同じくローム奨学生であった梅村と一緒に、ベルリンと日本にてシューマン夫妻のプログラムで演奏会を催しました。
クララの作品はもちろん、歌曲の金字塔とも言える「詩人の恋」や「リーダークライス Op.24」を全曲通して歌うのも初めてでした。
特に「詩人の恋」は全部で16曲なので、それぞれの曲の関係性を演奏に反映する必要があると感じた時、全曲を通して演奏する意味を考えさせられました。
6月からはラインスベルク国際声楽コンクールの受賞者としてオペラのプロジェクトに参加していました。
このコンクールは名誉のみならず、更なるキャリアアップを目指し受賞者にオペラや演奏会、マスターコースに出る権利を与えてくれます。今回私の出るオペラ「オラーツィオ兄弟とクリアーツィオ兄弟」はチマローザの悲劇で、私にとって初めてのバロックオペラです。
指揮者はイタリアバロックに詳しい方なので、アリアでのカデンツァの入れ方やレチタティーヴォの歌い回しのバリエーションなど綿密に教えてくれました。特にレチタティーヴォに関する助言は、どのような時代の作品であれ、イタリアオペラに取り組む際には役立つものでした。
8月からはハンブルクでオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の稽古が始まります。
今回学んだことを生かせる絶好の機会なので、バランスよくアウトプットとインプットをしながら、オペラ歌手としての表現力に磨きをかけて参ります。
<オペラにて。6mの高さから初めて歌いました。©uwehauth>
最後になりましたが、合計2年間にわたるご支援に感謝申し上げます。
様々なオーディション、コンクールに参加できたことで演奏の場も増え、また音楽家として幅広い成長ができているのは貴財団のご支援のお陰です。
これからも一人の音楽家として、日本・海外で感動を伝えられるよう精進いたします。
2年間、誠にありがとうございました。