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劇場での日々(栗原 峻希さん)7/4

栗原 峻希さん/Mr. Takaki Kurihara
(専攻楽器声楽/voice)

[ 2023.07.14 ]

サン・カルロ歌劇場研修場

ロームミュージックファンデーション奨学生の栗原峻希です。

この一年間は、僕の歌手人生においてかけがえのないものとなりました。

 

<サン・カルロ歌劇場でのオーケストラとのコンサートの様子>

 

 

イタリア三大歌劇場である、ナポリのサン・カルロ歌劇場の一番近くに居ながら、マリエッラ・デヴィーア先生の週三回のレッスンを受ける事ができ、また様々なオペラでヨナス・カウフマンやアンナ・ネトレプコ、エリーナ・ガランチャやルーカ・サルシなど著名な歌手達と共演、勉強させて頂き、歌手としての技術だけではなく、精神面でも沢山のかけがえのない事を吸収しました。

 

このナポリという町も、もっと早く訪れるべきだったと思うくらい、僕には特別な街になり、沢山の大切な思い出が詰まった場所となりました。

近所の八百屋さんも、魚屋さんも、お隣さんも、近くのピザ屋さんも、街の皆が心から受け入れてくれているのが分かり、より一層頑張る事が出来ました。

 

ロッシーニの時代の著名な作家、スタンダールは「ヨーロッパのどこにも、この劇場に比べ得るどころか、この劇場の素晴らしさの足許に及ぶところも存在しない。ここは人の目を眩惑し、ここは人の魂を狂喜させる」とサン・カルロ歌劇場の事を評しました。

ナポリに来たのはオーディションの時が初めてだったのですが、舞台にあがった時あまりの劇場の美しさに思わずハッと息をのみました。

オーディションが終わって、サンタ・ルチア港からヴェスヴィオ火山を見ながら、ここに住めたら素晴らしいなと思っていた事をよく覚えています。

 

<サンタ・ルチアから見るヴェスヴィオ火山>

 

 

デヴィーア先生のレッスンは、厳しくも、ひたすら声のクオリティに徹底しており、表現という言い訳に逃げない確固たるものがありました。

筋肉トレーニングのように、毎日のように「声」のレッスンを続けることで、みるみると伸びていくのが自分でも感じられました。

 

サン・カルロ歌劇場などヨーロッパの古くからの劇場はやはり日本の新しい劇場と比べて、音響がかなり乾いていると思います。

それらの劇場で音を客席に届かせる際に、とにかくベースとなる声の力、声の輝きが必要だと思いました。

これからも、この方向性を失わないよう、個人的にデヴィーア先生に師事していきたいと思います。

 

<コンサート後のデヴィーア達との写真>

 

 

これから留学される方々にアドバイスとして、最初は文化の違いに色々と戸惑い、受け入れるまでに時間がかかるかもしれません。

しかし、また別の文化を知る事で、日本の文化も客観的に見る事が出来るし、自分のキャパシティもきっと広がると思います。

僕は、海外でシェリル・ミルンズやレナータ・スコット、チェチーリア・バルトリ、そして今はマリエッラ・デヴィーアのレッスンを受け、彼らと交流して沢山の事を吸収してきました。

日本にいる時は、CDの世界だった彼らとの勉強・交流も、思い切って海外に出たからこそ実現できたと思います。

 

 

また今後とも、吸収した事を糧にこちらの劇場で歌い続けられるように頑張りたいと思います。

日本で名前をお見掛けした際は、是非コンサートに足をお運び頂けると嬉しいです!